夏休みレコメン特別企画、「歌謡曲でむりくり法律を覚えてしまおうシリーズ/民法総則編」。今日は代理です。
本当に悩みましたけれども、この曲にさせていただきました。
簡単に代理を振り返りますと、例えばあなたが法律的なトラブルに巻き込まれたとき、例えば貸金返還請求事件で裁判所から被告として呼び出されたとき、どうしていいかわからない。自分としては確かに金は返したはずなんだけど…。でも、確固たる法律知識がない状況では勝てるかどうかわからない。そこで、弁護士にお願いして、自分の代理人として働いてもらおうとする、そういうことによって自らの活動範囲を広げるのです。これを任意代理といいます。
また、自分がまだ未成年者で、完全な(財産に関する)法律行為ができないというときに、親がその行為を追認するであるとか、取り消したりするなどの、制限能力者の私的自治を補充するために、法定代理というのがあります。これは法律の規定によって代理権が発生します(例:未成年者に対する親権者…民818/未成年後見人…民838〜)。
さて曲なのですが、おそらくナイチンゲールあたりをイメージして作ったのでしょうけれども、果たして主人公は(心に)痛手を負った男の母親になれるのでしょうか。
まず、男と血縁関係のない主人公は、その男を養子にしなければなりません。まさかこの男が6歳(8歳)未満ではないでしょうから、普通養子ということになります。普通養子は婚姻と同様に契約として捉えられています。その要件は色々とありますが、まず形式的要件の届け出は別としまして、実質的には、主観的要件(=縁組意思の合致)と客観的要件(養親は成年者でなければならない…792/尊属又は年長者を養子とできない…793/794省略/795省略/798省略)があります。
岩崎宏美はこの歌を歌っているときは成人していましたが、24歳だったんですよね。ということは、この男は24歳以下(かつ岩崎宏美の誕生日より後に生まれた者)でなければなりません。
縁組の効果としては、その日から養子は養親の嫡出子となり(809)、養親の血族との間に法定血族関係が発生します(727)。
いろいろとめんどくさそうですが、なんとか主人公は形式的要件さえ揃えば、男の母親になることはできそうです。ところが曲では、「私の命さえ差し出して」男を守る契約、つまり、命の代理をすると言っているのですが、養母の方から言っているとはいえ、このような代理権の授与行為はもちろん公序良俗(90)に反して無効です。曲の中で代理がからむといえばこの点だけ(それだけかよ!)。
このような実例はさすがにないでしょうが、736条とのからみで、妾養子であるとか、芸娼妓養子(判例)などは公序良俗違反で無効とされるべきでしょう。
「聖母たちのララバイ」 1982年5月21日発売 ビクター
◆歌詞&MIDI
注)引いた条文はすべて民法