お久しぶりのレコメンです。今日は民法96条1項の詐欺です。
なお、本日からamazonへのリンクを始めました。買う人はいないと思いますが、せっかくレコメンしているのだから紹介ぐらいしておこうと思いまして。
さて、詐欺の成立には、詐欺者が故意により、違法な欺罔行為をしたことが必要です。
そして、その行為によって、表意者が錯誤におちいり、その錯誤によって真意に反する意思表示をしたことが必要になります。
この一連の行為を満たすと、意思表示にキズがありますから、無効ということになりそうですが、96条1項は、表意者は意思表示を取り消すことができるとしています。取り消せば、この意思表示は初めから無効だったことになります(民法121条本文)。もっとも、詐欺の場合は原則として錯誤無効も認められるので、大した差はないと言えるでしょう(二重効の問題などは、よく試験で見ます)。なお、96条3項により、詐欺による意思表示の取消は、善意の第三者に対抗できないと定められていることも確認しておきましょう(善意のみならず、無過失も必要だとするのが多数説です)。
それから、物の性質に関して詐欺が行われた場合には、瑕疵担保(民法570条)との競合も問題になりますが、どちらを選択して主張することも可能です。しかし、より保護が手厚いのは詐欺による取消のような感じがします。
ということでこの曲ですが、とくにこの問題が色濃く出ているのは2番ですかね。
店員「この車は掘り出し物ですよ、ですから絶対大丈夫ですから、今がお買い得ですよ」
と言われて、買ってみたらポンコツで、簡単に動かなくなって、修理するにはまた買ったときと同じくらいの値段がかかり、新車を買った方が安いということになってしまったようです。
店員は、ポンコツな車であることを知っていたならば、故意により違法な欺罔行為をしたと言えるので、詐欺による取消は認められるでしょう。
では知らなかった場合は?…この場合には瑕疵担保責任(民法570条)が認められそうです。瑕疵担保責任とは、売買契約において、目的物に隠れた瑕疵があった場合が買主にはわからなかった場合に、売主が負う責任のことです。とさらりと書き出しましたが、実はやっかいな問題が潜んでいます。というのも、この曲に出てくる車は、間違いなく中古車なんですよ。ということは、中古車は特定物なので、いわゆる「特定物ドグマ」の問題に突入してしまうのです。
中古車は特定物なので、売主は「その中古車」を引き渡せば、完全な履行はなされたという考え方(法定責任説)に立つならば、この中古車を直せ、と買主は売主に請求することはできないのです。なぜなら、売主は既にその中古車を引き渡すという義務を尽くしているのであり、瑕疵担保責任とは、それでは買主に酷なので法が特別に売主に課した責任を見ることができるからです。そこで570条を見てみると、「566条の規定を準用す」るらしいので、566条の効果を見てみると、それは「1年以内に解除か損害賠償」をすることができると書いているにとどまるので、いわゆる瑕疵修補請求はできない、ということになります。ただ、信義則上これを認めるべきであるなんて論証集にはよく書いてあるのですが、個人的には売主の義務は尽くされているのにもかかわらず信義則上認めるというのは、それは法律の規定を無視してるんじゃないかという気もします。
逆に、売主は「機能が完全な中古車」を引き渡す義務があるという考え方に立つならば(契約責任説)、売主はポンコツな車を引き渡してしまったのでは、いくらその中古車を買主に引き渡したからといって債務の本旨に従った契約の履行がなされていないので、依然として売主は完全な車を引き渡す義務がある、つまり、瑕疵修補請求も認められるということになります。ただ修補請求期間は、10年だとあまりにも長いということで、信義則上1年に制限されるというのが一般的です。もちろん買主は、解除や損害賠償もできます。修補請求はその上で認められるのです。
ただこの考え方をとると、結局債務不履行ならばその効果は415条、540条以下で損害賠償と解除が認められるので、570条は何のためにあるのだという話になってきます。その解決方法として、内田教科書であるとか、塩釜声の新聞社事件の判旨から読み取れることとか、いろいろと言われていますが、あまりに長いので、というかまだ自分の理解がそこまで至っていないから割愛。
一言付け加えるならば、市販の論証集などを見ていると法定責任説をとるものがほとんどなんです。しかし学説の大勢は契約責任説です。予備校教育とロースクールの教育に差が出るとしたら、ここではないでしょうかね。それでも、私の周りで予備校教育をかなり受けてきた人は、「法定責任説で通す」と言ってましたけどね。